子どもと絵本を楽しむために
Fun With Child
小学生になっても絵本を
小学生になったら
絵本は小さな子どもだけのもの
ではありません
最近は、「絵本は子どもだけのものではない」と、いわれるようになりました。一方、依然として、「小学生になったんだから、絵本じゃなくて童話の本にしたら」という親御さんも多いようです。でも、一口に絵本といっても、小学校も中学年ぐらいになって初めて、本当のおもしろさがわかるものもあるのです。
たとえば、ものを作ることが好きで、手先が器用なジョニーの物語『時計つくりのジョニー』は、周囲の無理解の中で、仲良しの友だちに支えられながら、大時計を作るという自分の夢を貫き通す少年の姿が描かれています。この絵本は、小学校での読み聞かせなどで、低学年から高学年まで幅広い年齢の子どもの共感を呼んでいます。
また、ことばあそびの絵本の『かえるがみえる』は、“~える”ということばの連続をユーモラスな絵で見せてくれる絵本。たとえば、「かえるは かえる」という、ひらがなで書けば同じことばが、絵がつくことによって、「(ひっくり)返る」「(家に)帰る」「(服を)替える」「(お菓子を)買える」となって、お話が進んでいきます。小学生はもちろん、大人のファンも多いこの絵本は、日本語の楽しさにあらためて気づかせてくれます。
大人はよく、子どもの本を選ぶとき、文章の量で「小さい子向きでは?」と判断しがちです。でも、この本のように、字は少なくてもかなり高度な楽しみが詰まった絵本もあるのです。
自分で本を読む楽しみを
子どもたちに
絵本をたっぷり読んでもらい、こころから楽しんだ子どもたちは、たとえ一時的に本から遠ざかったとしても、必要なときがくれば、たいていは、また本を読むようになるものです。ただ、刺激的なメディアに溢れた今という時代では、子どもと本を出会わせるために、少しまわりの大人が手助けする必要はあるでしょう。ひとつは、『みしのたくかにと』のように、場面を想像する助けになるような、楽しい絵がついた絵物語の本を薦めてみるのもいいかもしれません。
もうひとつは、小学校中学年以上の子どもたちにも、お話の本を読んであげることです。
字を読めることと本を楽しく読めることとは、まったく違うことです。文字という“記号”にやっとなじんだ子どもが、単語をつなぎ合わせ、それを前後の単語とつなげて、文章の意味を理解する。さらに複数の文章をつなげて、ストーリーを思い描き、しかも“楽しむ”までには、何段階ものハードルがあります。物語との出会いを求めている子どもたちは、そのどこかのハードルでつまずき、楽しい物語と出会えずにあきらめているのかもしれません。そんな子どもたちに、大人がお話を読んでやることは、記号である文字に、“読み手のイメージ”という命を吹き込んで、子どもに届けてやることなのです。
「いつまでも読んでやって甘やかしたら、なおさら自分で読めなくなるのは…」と心配なさるかもしれませんが、そんなことはありません。耳から聞いて充分に物語を楽しめば、子どもたちは自然にその本に手を伸ばし、聞き覚えのあるお話を自分で読んでみたくなるでしょう。「本と子どもを結びつける最良の方法は、子どもに本を読んだり、お話を語ってやること」ベテランの児童図書館員は、だれもがそうおっしゃいます。
さて、そんなときにお奨めしたいのが『子どもに語る昔話』シリーズです。もともと人から人へ伝承されてきた昔話は、聞いて楽しむのには最適な文学だからです。しかも、声に出して読みやすく、耳から聞いてストーリーをイメージしやすい美しい日本語で再話されているので、すでに図書館でも定評を得ています。一冊に長短様々なお話が何話も入っていますから、学校での読み聞かせにもピッタリでしょう。